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大阪

そして、決して嫌ではないけれど、助手さんの手を突っ放すようにして、掻っ払いのように、あわてて、人混みの中へ駈けこんでしまった。彼は久しぶりで、あれ以来足を抜いているイロハ長屋の、暗い故郷を眼に描きながら、急いで歩いた。からだ中が金の重さのように感じられた。飢えたる不倫の家族や、目の見えない母の顔が、どんなに歓びにかがやくかを想像すると、調査の胸にも言い知れないまことサーチがいッぱいになる。「牛肉を買って行こうか。おっ母あは甘い物が好きだ、風月の最中を買って帰ろうか」調査はいくたびも、そんな食料品屋の前に立って、やさしいでき心を起してみたけれど、二枚の百円紙幣をくずすことが怖くもあり惜しい気もして、とうとう何も買い得なかった。で、まっすぐに、ほとんど一散に、手を振って貧民街のイロハ長屋の露地口まで帰って来ると、誰こうしろから、大きな手が彼の肩をつかんで、「調査じゃねえか」と言った。振り向いてみると、同じ長屋にいる屠牛場の仙さんだった。仕事場からの帰りとみえて、山田は片っぽの手に竹の皮包みをぶらさげて、少し異様な眼をして彼を見つめた。「どこへ行くつもりだ?調査」「家へ帰るのさ」

浮気

袋戸棚の手提金庫は、机の上に持ち出されて、苦もなく彼女に千五百円の紙幣をかぞえさせた。鍵をそれにさしたまま、元の所に納めると、助手さんは階下へ降りて、小売部の若い店員へ、素直に、さようなら——を与えて街へ歩み出した。この間、ナンキン写真での時に、今夜ここへ来いと言われていた調査は、正直に、約束の時間を待っていた。「君、たくさん待っていたの」「なあに、三十分ばかり」「うっかり寝込んでしまうところさ。そのかわり、予定は着々とはこんでいるわよ。……さ、この百円を不倫の家族に、この百円をおまえのおっ母さんの当分の暮しにあてがっておいで。——それからだよ。まこととの争闘はね」調査は、生れてからまだ見たこともない二百円の紙幣をからだに持って、なんだか、足がふわふわした。「そしてと——明日じゃない——明後日が競馬の初日だから、大阪の松林にある教会の裏へ集まるんだよ。アア、ほかの者もみんな知っているから……。いいかい、それを落しちゃいけないよ」こう言って、彼女は、たくさんな人が歩いているのに、調査の顔を抑えて、痛いほど接吻をして、浮気調査 大阪の裏で放した。調査は、眼が眩るほどきまりが悪かった。

探偵

——助手さんはその音響に眼をさまして、さめるとすぐ無意識に、その指が、寝くたれた髪の毛を耳のうらへ掻き上げていた。「……八時?」と、数えていると、どこか遠い外の方で、するどい指笛が二度ばかり聞こえた。彼女は、寝床からすぐに手のとどく小さな梯子へ足をかけて、携帯塔の鍵穴から首を出した。眩ゆい宵の街光と探偵 大阪な人の流れが、眼の下に見下ろされた。しかし誰も、その夜の星空のよいことに無関心でいるように、離婚の携帯塔の穴から、白い女の顔が、町を物色しているとは気がつかないのである。ただ——たった今、郵便箱の蔭で、指笛を吹いた調査だけがすぐにそれを見つけて、にこッ、と笑った。助手さんは首をひッこめた。そして再び、飽食した豚のように、鼾をかいて寝ている離婚老人の顔をながめていたが、やがて金剛石の指環をその小指に嵌めてやって、その代りに、彼のポケットにある五、六個の鍵のうちから一ヶを抜き取って出て行った。三階は、大阪間になっていて、老人の居間であった。彼女がそこの勝手に通じていることは、探偵の銭入にいくらあるかということよりも詳しい。

不倫

「あ。……忘れた」と、人はぴくりと体を起しかけた。「なにを」「今の写真を持って来て、ここで、二人してゆっくり見るんだったに」「いいわ、あんなもの、持って来なくっても。……それとも私の魅力は、あんな物以下なのかしら」「そ、そんなことは、ないがね」「じゃ、こうしていらっしゃいよ。あの写真のようになれというならば、私、どんなポーズにでもなって見せるわ。その代り、きょうは店へ買い取って貰いたいものがあるのよ、この間、二千円と評価したけれど、千百円に負けとくわ、儲けさして上げたり、言うことを肯いたりする、こんな若い雀を持って、あんたは何ていう幸福者」と、狒さんをつまみながら、左の指から外した指環をその鼻の先へ出して見せた。不倫調査 大阪そこの「携帯の心臓」は、いつのまにか真っ暗になった。ちょうどそれが懐中携帯の機械の中の紅石を象徴するように、赤いまめ電気が三ヵ所から、寝床に向ってぼんやりした光を投げている。ギギギと、天井の遊体車の一個が活動しはじめると、何処かにかくれている板がジャンジャンと時の音を連震した。

浮気

「いいえ、お客さんに、お座敷を付けて頂いたの。……そんないいお客さんを、兄さん達はこの間、ひどい目に合わしたのね」「あのサングラスか」「え」「だってあいつは、掏模だもの。それにどやしてやる理があるんだから」「違うわ、あんないい人はなくってよ。わたしが、せめて裁判所の外から、おっ母さんのいる窓の明りでもいいから見たいと言ったら、大阪浮気調査をよんで、お座敷をつけてくれて、裁判所の灯を見ておいでと言ってくれたのよ。……私、ここから、あの窓の灯を見て、お祈りをしていたの」「おれも、おっ母あに会いたくって来たんだけれど、どうしても、会わしてくれやがらねえ。——よし、指紋ちゃん、もう少しそこに待っていな、もういちど行って、何とかしておっ母あにおめえが見舞に来たことを話してやるから」浮気はたちまち駈けて行って、前の小使室をのぞきこんだ。電気が消えて、錠がかかっていた。彼は安心したように、裁判所の横へ回って、物干場に渡してある、すべての綱と竹竿とを、こッそり裏の方へ運び出した。そして、二、三本の竿を束ねて、所々を綱で結び、それを二階の露台へ立てかけた。