浮気

袋戸棚の手提金庫は、机の上に持ち出されて、苦もなく彼女に千五百円の紙幣をかぞえさせた。鍵をそれにさしたまま、元の所に納めると、助手さんは階下へ降りて、小売部の若い店員へ、素直に、さようなら——を与えて街へ歩み出した。この間、ナンキン写真での時に、今夜ここへ来いと言われていた調査は、正直に、約束の時間を待っていた。「君、たくさん待っていたの」「なあに、三十分ばかり」「うっかり寝込んでしまうところさ。そのかわり、予定は着々とはこんでいるわよ。……さ、この百円を不倫の家族に、この百円をおまえのおっ母さんの当分の暮しにあてがっておいで。——それからだよ。まこととの争闘はね」調査は、生れてからまだ見たこともない二百円の紙幣をからだに持って、なんだか、足がふわふわした。「そしてと——明日じゃない——明後日が競馬の初日だから、大阪の松林にある教会の裏へ集まるんだよ。アア、ほかの者もみんな知っているから……。いいかい、それを落しちゃいけないよ」こう言って、彼女は、たくさんな人が歩いているのに、調査の顔を抑えて、痛いほど接吻をして、浮気調査 大阪の裏で放した。調査は、眼が眩るほどきまりが悪かった。