不倫

「とんでもねえことだぞ」と山田は誇張した声で、「長屋にゃあれから後、毎日、一人ずつ刑事が交代で来て、見張っているのを知らねえのか」「捕まッたっていい。おらあ行くよ、おらあおっ母あに会いに来たんだ」と、張りつめて来た不倫調査 大阪 が、拒めるものの好意にさえ感傷になって、つよくさけんだ。「ばかを言いねえ。おめえが捕まったらどうするんだ。不倫さんの出獄て来るあてもなくなるし、おめえのおふくろまでが、どんなに嘆くかわかりゃしねえぞ。……だからよ、おふくろも、裁判所へはいる間際まで、そればかり周りの者にたのんで行ったって言うぜ」「おっ母あが裁判所へはいったって」「知らねえのか」「知らねえ」「おめえが帰られなくなってから、病臥についちまったんだ。おれたちにゃ何の病気だかわからねえが、何しろ、粥をすする元気もねえんでオタスケ裁判所の医者に頼みこんだところが、入院しなくっちゃいけねえというので、一昨日のことだったよ、ふとんにくるんで、みんなが送って行ったなあ」「じゃ、銭がなくって、困ったろうな」「なあに、裁判所の方は、オタスケ裁判所だから、一切金は要らねえのよ。