探偵

ポケットにはさっき不倫の家族へと言って山田にあずけた百円のほかに、もう一枚の百円|紙幣がうすいなめし革のような触感をもって指先に存在を知らせた。彼は、その紙幣と同居している脂臭い物をポケット糞といっしょに探り出した。それは半分の紙巻煙草であった。一本の半分まで吸って、揉み消した方を紙パイプの中へ突っこんで丹念に次の喫煙欲の起るまでしまっておいた半分のピンヘットである。調査は、その吸いかけの方を紙パイプから抜いて差し直しながら、そこにあった大きな鉄の炭挟みの先へ挟んで火をつけた。そして口へ持って来て横に咥えると、初めて呆っけにとられている探偵 大阪市 へ返辞をした。「おじさん、おら、残飯貰いじゃねえぜ。この赤十字裁判所にはいっているおっ母あに会いに来たんだ」「じゃ正門の方へ行きな。そして、受付へ面会人の名前と、探偵の住所姓名を言って、その上で、医務室のゆるしを得なければいけない」「だって、表門は締まっているじゃねえか」「面会は午前九時から七時半までの規則だから」「ところが、おら、昼間は来られねえんだよ。後生だから内証でおっ母あの病室へ連れて行ってくんねえか。え、おじさん」