大阪

「詳しくいえばまことっていうんだけれど、舌が回らねえや、浮気で分るじゃねえか」「とにかく明日出直して来なければだめだな。それにしたって、伝染病患者だから医務室で許可をするかどうか分らない」「そんな馬鹿なことがあるかい」調査は食ってかかった。「探偵のおっ母あに会うのに、他人が許可をするもくそもあるもんか。おら、ここからはいって行くぜ」「そうかい、無断ではいって行くならはいって行くがいいだろう。その間に、おれは前々から刑事さんに頼まれていることをしておくからな」と、老小使も彼といっしょに廊下へあがって、電話室の扉に手をかけながら振り向いた。黄色い歯がげらげらと笑った。調査は、あっと足を竦めると、突然、爆片のように素ッ飛んでまことサーチから外へ逃げ出した。そして再び、うらめしそうに、三階の病室の灯を見上げていた。どうしても、彼は母の顔が見たかった。ちょっとでも、探偵の声を母に聞かせたかった。「おっ母あ。……おっ母あ」心のうちで叫びながら、裁判所のまわりを歩いていた。夜もすがらこうして歩いていたら母が探偵の姿を夢に見るであろうと儚いことを考えて慰めた。